はじめに
新卒で入った会社で生活支援員として約2年半働いた経験がある私。入るまではどんな仕事内容なのかわからず、配属されてからも最初は覚えるのに一生懸命でした。今回は生活支援員がどんな仕事内容か、どんな人が向いているかなどをお話しします。
※あくまで私の経験に基づく話になるので、施設によって仕事内容などは大きく変わってきますのでご容赦ください。
生活支援員とは?
生活支援員とは、福祉施設やグループホームで、障がいを持つ人の日常生活を支援する専門職のことを主に指します。高齢者施設における介護職員と同様に、食事や入浴の介助からレクリエーション活動の企画まで幅広い業務を担当することが多いです。
障がいの種類(知的、身体など)、障がいの重さによってご利用者一人一人に対する支援も変わってきます。私が働いていたのは重度の知的障がいを持つご利用者の入所施設でしたが、ご利用者によって寝たきりに近い人もいれば、見守りは必要だけど身の回りのことは自分でできる方など様々な方がいらっしゃいました。
生活支援員の仕事内容
では実際に生活支援員の仕事内容はどんなものなのか?私が実際に働いていた経験を踏まえながらお伝えします。まずざっくりとした業務内容はこんな感じ。
- 食事、排泄、着替え、入浴などの支援
- レクリエーション活動やイベントの企画や実施
- ご家族や福祉サービスとの連絡、連携
- 個別支援計画の作成と実行
具体的に説明していきますね。
食事、排泄、着替え、入浴などの支援
普段私たちが日常生活で行っていることの支援を行います。これは利用者の障がいの程度や年齢によってみんな必要な支援が異なってきます。
食事関係
食事を自分で食べることが難しい方への支援はもちろん、食べ物を喉に詰まらせやすい方は事前におかずを一口サイズにカットして準備を行なったり、見守り支援を行います。食事後の口腔ケアもかなり重要。虫歯や歯周病にならないために必要な支援を行います。
排泄支援
身体が思うように動かせない方や、自分で尿意や便意がわからない方へ誘導や支援を行います。必要に応じて、尿取りパッドやオムツを利用する方も。自分でトイレに行けても清拭が十分にできない方へは、清潔を保つために支援を行います。
私が働いていた施設では排泄(特に排便)の記録を必ず行なっていました。形状や量、いつ出たかを記録することで体調の変化や便秘になっていないかのチェックを行なっています。何日も便が出ていない利用者に関しては、看護師へ報告して摘便や浣腸などの必要や処置を依頼していました。
入浴、着替えの支援
お風呂は大きい浴室でいくつかのグループに分かれて入っていました。入浴は特に転倒や溺れるといったリスクが非常に多いので見守りや傍で支援することが大切です。全員が入り終えたらそのまま浴室の掃除と脱いだものの片付け。私のいたところは同じ敷地内に専用のクリーニングセンターがあり、洗濯物は基本全てそちらに預けて洗ってもらっていました。おそらく施設によっては洗濯機を設置して自分の施設内で行うところもあるかと思います。
服薬支援
障がい者の方は薬を飲んでいる方が非常に多いです。精神を安定させるものやてんかん等の持病の薬など種類は本当に様々。薬の準備は看護師が行いますが、実際の服薬は生活支援員が行なっていました。服薬は誤薬があると、人によっては命の危機になることもあるので間違いは許されません。必ず支援員二人で確認を行なってから、服薬支援を行うようにしていました。また、中にはきちんと飲みきれず吐き出してしまう方もいるので、飲み切ったかどうかの確認も必ず行なっています。
体調管理
上述で行っている支援や日常の中では常にご利用者を観察して健康状態などをチェックしていました。自分で体調不良を訴えてくれる方ばかりではないので、支援員たちが食事量や排泄の状況などをチェックしています。ただ、あくまで自分達は医療従事者ではないので、体調不良が見つかった場合、まずは施設看護師に相談したり、看護師や相談員に相談してかかりつけの医療機関へ受診してもらうよう依頼するようにしていました。
余暇活動やイベント
余暇活動にはご利用者みんなで散歩へ行ったり、室内でテレビを見たり各々好きなおもちゃなどで遊んでもらうことが多かったです。見守りしながらご利用者と話したり一緒に活動することもありました。
また、季節や定期的なイベントもあり、私がいた施設では、職員がその計画や実施などを行っていました。施設内の行事は基本支援員がメインで計画や実施をしていましたが、花火大会や運動会といった季節的なイベントは他の施設と合同でやるものも多く、施設長や相談員の方がメインで企画などに携わり、当日の準備や支援を行う方が多かったです。
ご家族や福祉サービスとの連絡、連携
基本的にご利用者の家族と関わるのは施設の窓口となる生活相談員や施設長であることが多いのですが、やはり日常の様子を一番見ているのは支援員。ご家族が面会にきてくれた際には、立ち会って普段の様子などを伝えることが多くありました。
利用者の個別支援計画の作成と実行
個別支援計画とは、利用者のニーズや目標に合わせた具体的な支援を計画し、提供するための文書。この計画に基づいてサービスを行う必要があるため、支援をするための重要な基盤になってきます。
個別支援計画自体はサービス管理責任者が作成するのですが、支援内容を決めていくに当たっては担当の支援員も入り担当者会議を行います。その中で普段の様子を伝えたりすることで次にどのような支援をしていく必要があるのかを他職種の人たちと話し合っていきます。
こんな人に生活支援員は向いている
ここまではどんな仕事をしているかをお話ししてきました。次に、どんな人が生活支援員に向いているのか、私の主観ですがお話ししていきたいと思います。
臨機応変に対応ができる人
私が働いていた中で常々思っていたのは「毎日何かが起こる」こと。同じ日常の流れで同じ業務をこなすことは正直ほぼありません。良くも悪くも必ず何か事件が起きます。何かが起こってもパニックにならずに冷静でいられる方は、それらに落ち着いて対処ができると思うので、この仕事に向いていると思います。
人とコミュニケーションを取るのが好きな人
生活支援員はコミュニケーションが欠かせない仕事で、特に利用者のニーズに応えていくには傾聴力が大切です。利用者の話や行動から、その人が何を求めているのかを汲み取り、信頼関係を築いていくためです。
また、その人に最適なサービスを提供するために、相談員や看護師と連携してくことも必要なので、必要に応じて連絡、調整をすることも大切になってきます。
体力に自信がある人
食事や入浴、排泄支援などの身体介護には体力が必要になってきます。ご利用者によっては自分よりも一回りも体格が大きな方の支援も行うこともあります。(もちろん必要に応じて二人体制で介助は行います)
私は身長156㎝でどちらかと言えば小柄に該当する体格なので、特に男性の介助を行うときは自分よりも体格の大きい方の対応をすることが多くありました。運動神経は求めずとも、それなりに体力がある方が向いていると思います。
実際に働いてみて思ったこと
この生活支援員という仕事を約2年半やりましたが、最初は色々な意味で衝撃的でした。人の食事や排泄、お風呂の支援なんてやったことがないし、入所しているご利用者の名前も全員覚えるまで3ヶ月近くかかるしでとにかく最初は目まぐるしく毎日が過ぎました。
私は決して社交的な方ではないですが、ご利用者との交流は好きでした。大半が自分よりも年上の方で、趣味や話題が共通するわけではありませんでしたが、その人がどんなふうに今まで生きてきて、どんなことが好きなのかを知っていくことが楽しいと感じていました。新しいことを知ることが好き、人に興味があるという人には向いているのかもしれません。
勿論、大変なことも多くありました。悲しきかな、若い女性な上に新人だとまあ利用者に舐められます。一緒に入った同期の男の子や先輩の言うことは聞いてくれるのに、私だと全然聞いてくれないなんてことも日常茶飯事。正直「くそ〜!」って思いながら仕事していました。
あとは正直な話、生傷が絶えませんでした。利用者の中には他害行動をとってしまう方も中にはいて、しょうっちゅう引っ掻かれたり、頭や腕に噛みつかれることもまあありました。
そして衝撃的事件もたくさん経験しました。夜勤中に脱走して無銭飲食していると連絡があったり、起床支援に行ったら部屋中が便まみれになっていたり、夜のお誘いを受けたり…
それでも、生活支援員として働いているときは一度も「辞めたい」と思ったことはありませんでした。利用者と関わることが好きだったこともそうですが、当時一緒に働いていた施設の職員にも恵まれていたことが大きかったと思います。年代が近い方が多く、困ったときはお互いに助け合ったり、仕事後にご飯や遊びに行くほど仲が良かったので、今でも当時一緒に働いていた人たちには感謝しています。
施設の異動と職種の変更があり生活支援員の仕事は約2年半で半強制的に終了してしまし、異動先での諸々のストレスで最終的には退職するに至りました。
ちなみに生活支援員から異動した後についてはこちらで備忘録的に残しています。
辞めたきっかけの異動先のことは今でも嫌ですが、生活支援員として働いた施設のことはどうしても忘れられず、今でも時々HPから活動の様子を覗いたりしています。